映画「エニグマ」から始まる学問の旅路:60代教授の回顧録

カンバーバッチとチューリング:意外な出会い

 最近、NHKでシャーロック・ホームズを演じていたベネディクト・カンバーバッチが出演する映画「エニグマ」を最近見ました。その映画の中で彼が演じている数学者を見ながら、私の心の中で大学時代のゼミでの熱い議論がよみがえってきました。その思いの一端をお伝えしようと思います。今や白髪交じりの60代の大学教授ですが、かつて私も好奇心旺盛な学生でした。

卒業研究と運命の出会い:チューリングの論文

 大学4年生の時、卒業研究で同級生が担当教授に勧められて読んでいたのが、このチューリングの論文だったんです。今思えば、コンピュータの始まりとも言える重要な論文でした。当時の私には「何かめんどくさい手続きを書いている論文」としか思えませんでしたが。若気の至りですね。

我々の研究室は「生物物理」の研究室で、担当教授は確か「数理生物学」専攻だったと思います。そんな中で、卒業研究のメンバーは遺伝学や脳の記憶回路の論文を読んでいました。そして私には、なんと非線形の方程式の論文が指定されたんです。

恩師の知性の広さに驚愕:今になって分かる凄さ

今、この話を振り返って愕然としているんです。その恩師の知性の守備範囲の広さに。そう、その時その先生はまだ30代だったんですよ。生物学から数学、物理学まで、幅広い分野を自在に操っていた。

現在、私自身が60代で大学の末席に座っているわけですが、あの頃の恩師のすごさに今更ながら驚きと畏怖を感じています。30代でそこまでの知識と洞察力を持っていたなんて、本当に驚異的です。

学問の深さと広さ:若き日の無知を笑う

当時の私は、自分の担当した非線形方程式の論文で精一杯でした。「なんでこんな難しいのを俺だけ...」なんて不満を漏らしていたかもしれません。でも今になって思うのは、あの時の恩師は私たち一人一人の適性を見抜いて、最適な課題を与えてくれていたんだということです。

チューリングの論文、遺伝学、脳科学、非線形方程式。一見バラバラに見えるこれらの分野が、実は深いところでつながっていることに、今やっと気づきました。若い頃の自分の無知を笑いたくなります。

知の探求:終わりなき旅路

今、私も大学で教鞭を取っていますが、あの恩師のような広い視野と深い洞察力を持てているでしょうか。正直なところ、まだまだ及びません。でも、あの時の経験が、学問の奥深さと面白さを教えてくれたんです。

カンバーバッチの演技を見ながら、チューリングの業績に思いを馳せ、そして自分の学生時代を振り返る。なんとも不思議な経験でした。でも、こうして過去を振り返ることで、学問の旅路はまだまだ続いているんだと実感します。

さて、明日の講義では学生たちにこの話をしてみようかな。「君たちも30年後に今の自分を振り返って、きっと驚くはずだよ」なんて。そうすれば、彼らも学問の面白さに目覚めてくれるかもしれません。

そうそう、講義の準備をしなきゃ。今夜はこの辺で。でも、その前にもう一度「エニグマ」を見直してみようかな。今度は違った発見があるかもしれません。学者の好奇心って、年を取っても衰えないものですね。

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